箕面船場は、可能性にあふれるめずらしい街 vol.1
北大阪急行「箕面船場阪大前駅」の開業を機に、大きく生まれ変わる箕面船場エリア。かつての繊維の街が、緑豊かな自然と都市の利便性を織り合わせた新たな街づくりの取り組み「GreenWeaving」によって、暮らす人と働く人が交差するにぎわいの拠点へとアップデートを遂げています。今回は、この取り組みを「街づくり」の視点で支えてきた竹中工務店と、「デザイン」の視点でプロジェクトに伴走してきたLANDMARKに、GreenWeavingの魅力やこれまでの歩みについてお話をしてきました。
目次
プロフィール

栗原(写真右から2番目) : 株式会社竹中工務店 開発計画本部西日本3グループ長。2014年から箕面船場エリアを担当。
菅野(写真右): 株式会社竹中工務店 開発計画本部西日本3グループ。2022年から箕面船場エリアを担当。
萩原(写真左から2番目): 株式会社LANDMARK 代表。クリエイティブディレクター。2009年箕面船場からスタートしたデザイン会社。
川村(写真左): 株式会社LANDMARK デザイナー。(本記事ファシリテーション担当)
箕面船場は、可能性にあふれるめずらしい街

川村 大阪、箕面船場という地域について教えてください。
栗原 箕面船場エリアは、もともとは千里丘陵を伐り開いて開発された土地なんです。そこに大阪市内の船場エリアの繊維業の皆さんが業務を広げるために、集団で移転して来られた。それが、ちょうど1970年の大阪万博で地域が盛り上がっていた時期のことです。今はその移転して来られた社長の代の次の世代、さらに次の次の世代の社長方が中心になって団地組合(※)を運営し、箕面船場の街づくりを担われています。そんな繊維の街に新しく駅ができるということで、2022年よりまちづくりコンサルとして竹中工務店が入らせていただいて、団地組合と箕面市と具体的なまちづくりの方策・実施について議論を重ねてきました。
※正式名称「大阪船場繊維卸商団地協同組合」通称「COM ART HILL コムアートヒル」

箕面船場阪大前駅 駅前広場(地上)イメージ 箕面市HPより
川村 竹中さんと団地組合さんとのお付き合いはどれくらいになるのですか?
栗原 私たちがコンサルタントとして関わらせてもらうようになったのは、箕面船場駅ができる10年前の2014年の箕面船場阪大前駅の門前となる土地区画整理事業からのことです。

萩原・川村 街づくりって長い時間をかけて取り組むものなんですね。
萩原 ランドマークは、2009年に箕面船場のポパンクールカフェの一室から始まり、今もそこに本社を置いています。当時から変わらない景色もありますが、街全体で見ると、ここ数年は大きな変化を感じています。

栗原 もうすぐ駅前のW TOWERSが完成して、新しい街づくりのフェーズ1がひと段落します。駅前は空中に広がったデッキ空間が特徴的ですが、最初は地上部分を歩かせるような提案もさせてもらったりしていました。新御堂筋をまたぐ歩行者デッキでつなぐことや、将来的に団地組合のエリアに向けて道路をまたいで移動できる安全安心の歩行者通行機能を確保すること、さらに駅前に必要な駐輪場をデッキの下に入れ込む案等が検討されて現在の形になっています。また、当時箕面市が街の核となる機能導入に熱心に動いてくださって、市のグリーンホールの機能移転や図書館機能の導入、大阪大学箕面キャンパスの移転等を実現させ、箕面船場のフェーズ1の骨格ができあがりました。
長年みんな、緑をずっと求めていた。

萩原 「Green Weaving」プロジェクトは、どのタイミングで始まったのですか?
栗原 我々が入る前段階で、街のコンセプトである「COM GARDEN CITY」について団地組合さんが議論されている中で、団地組合企業で共有してできることとしてグリーン事業をやろう、となっていたようです。大学生やマンションに住まわれる新しい人も来るし、街の価値を高めていきたいという想いを持たれていました。その具体策を私たちも一緒に協議して、「Green Weaving」プロジェクトを立ち上げることになりました。

組合の企業さんの敷地を見ると、1970年代当初からセンスよくいこう!という気概を持っておられたことが今でもわかるんですよね。およそ50年経って建物は古くはなっているけれど、実はよく見るとユニークなものが多いんです。今でこそ物流も環境配慮で外観に配慮してという話になりますが、当時のことを考えると普通に物流倉庫なのでもっとシンプルで朴訥(ぼくとつ)とした感じでもいいはずですが、繊維業の社長さんたちが自分達の気概を表現したかったんじゃないかなと思います。
菅野 建物もそうですし、外構なんかも洒落ているので、当時の活気が見えますよね。時間が経つにつれて、メンテナンスが続かなくなってしまったけど、自分たちが働いているエリアを良くしたいという想いはずっとあるのだと思います。

萩原 団地組合さんの「COM GARDEN CITY」のスローガンに「杜で働き、杜を育み、杜に生きる」とありますものね。「森」ではなく「杜」にしたのも、みんなで手入れしていく、という気持ちからだとお聞きしました。

菅野 緑化事業も、いろんな方法を提案しました。今100社ほどの企業が団地組合に参画されているのですが、1社に1つずつプランターを置いて、ランドスケープを作ろうか、と考えたりもしました。でも、それぞれの建物や日当たりの状況、管理に対するスタンスが違うので、難しいねという話になって。最終的には、自社敷地を緑化する「民地内緑化」の取組を実施してくださる企業さんに補助金を出すことになりました。だけど、補助金がもらえるから、ではなく、やってみたいから、という理由で緑化を始めてくださっているように感じます。

栗原 みなさんプライドをお持ちだと思います。大阪船場の繊維業の、いわゆる船場の旦那衆みたいな人たちが作った街ですし、今の社長さん方は、父親や祖父の背中を見てきたので、自分も街を良くしたいと思っているのではと感じました。
萩原 緑化事業とだけ聞くと、ほんわかした空気に思えますが、「街をよくするぞ」という強い意思表示の結果として、「Green Weaving」プロジェクトが動き出したのですね。
菅野 新しい街づくりとして、おしゃれな店舗に来てもらうなど、考えていることはいろいろありましたし、これからもそういう取り組みを考えています。ただ、まずは誰もがこのエリアに必要だと感じている緑化を進めることになりました。緑は暑いときの日陰空間を作ってくれるだけでなく、景観としてエリアの価値を上げることにもつながります。今後、商業施設を作るとか、組合員の方々が求める施設を作っていくことは、皆さんと議論しながらじっくり考えていきたいと思っています。
竹中工務店
建築を起点に、都市開発やまちづくりまで幅広く手がける総合建設会社。建物だけでなく、人が集い、地域に新しい価値が生まれる場づくりに取り組んでいます。
株式会社LANDMARK
LANDMARKは、2009年に箕面船場からスタートし、デザインを軸に人・企業・地域の未来をつくるプロジェクトを手がけるデザイン会社です。